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陸上女子・田中希実「幸せだった」パリ五輪から世界の“トップ・オブ・トップ”目指し誓い新た「先陣を切って道を切り拓く」

「幸せだった。その一言に尽きます」。9月25日、都内のニューバランスジャパン本社で行なわれた今期の総括会見で、陸上女子中長距離エース・田中希実は、充実した表情でパリ五輪の感想を述べた。同大会直後には、休むことなくダイヤモンドリーグシリーズを転戦。最終戦の女子5000メートルでは14分31秒88のシーズンベストをマークし、6位と好成績で今季のラストを飾った。走りを通して自分自身と向き合ってきた彼女は、2024シーズンをどう振り返ったのだろうか。※トップ画像/筆者撮影

圖標1482131451808佐藤校長 | 2024/10/22

パリ五輪は「幸せ」な場所。2度目の大舞台に充実感

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作者拍攝

今季は1月の全国都道府県対抗女子駅伝(皇后杯)から始まった。田中は兵庫代表として出場し、2区で19人抜きの激走で区間賞を獲得。翌月のアメリカ・ボストンで開催された世界室内ツアー・ゴールドでは、女子1500メートルで4分8秒46の室内日本新記録を樹立した。続く3月にはイギリス・グラスゴーで行なわれた世界室内選手権の女子3000メートルで、8分36秒03の室内日本新記録を出し、8位入賞。世界を転戦しながら各種目で成績を伸ばし、パリ五輪に向けて順調に準備を進めていった。

「今年のオリンピックまでは、国内レースはかなり絞って、いままで以上にダイヤモンドリーグに参戦したりと、基本的に海外に重きを置いて活動していました。昨年まで定期的に行なっているケニア合宿も取り入れたりしたので、充実したシーズン前半を過ごせたと思います」(田中)

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その後、6月のパリ五輪代表選考会を兼ねた日本選手権女子1500メートルで優勝し、先にパリ内定を得ていた5000メートルとともに代表権を獲得。この2種目で、東京大会に続く自身の2度目のオリンピックに臨んだ田中は、大舞台でのレースをこう振り返った。

「結果とかは関係なく、日本チームの一員として(オリンピックに)向かって行けたことが幸せでした。努力が報われた、とは言えない結果ではありました。けれど、それを受け入れられるだけの努力はしてきたので、悔しさ以上に幸せを感じることができたんだと思います。アスリートじゃないと、オリンピックに出ないと味わえない思いもありますから。“幸せ”という表現に結果が伴っていないので、みなさんには伝わりづらいかもしれませんが、目標に届かなくてもこういう感情が湧いてくるのは、オリンピックという舞台ならではなのかな、とも思いますね」

1500メートルでは、前回大会で更新した自身の日本記録に0秒51に迫る3分59秒70の好記録を残すも、準決勝敗退。5000メートルは予選落ちに終わった。パリ五輪直後は悔しさもにじませていた。それでも、この日の報告会で見せたその表情は、真剣ながらも、どこか晴れやかに見えた。

田中希実を支えるニューバランス“ギア”

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昨年からプロに転向し、ニューバランスに所属している田中。これまで多くのランニングシューズをリリースしてきた同社だが、彼女はどうギアを使い分けているのだろうか。

「疲労抜きジョグの時は厚底の『FRESH FOAM X 1080(フレッシュフォーム エックス テンエイティ)』を使用しています。クッション性の高い素材なので、あまり足に負担をかけることなく楽に走ることができます。逆にウォーミングアップの時は、『FuelCell(フューエルセル)』という反発性に優れたシューズを履いていて、なかでも薄底のものを選んでいます。これで自分の足の感覚と、地面からの反発を確認しながら走ることを意識しています。

また、地面がゴツゴツしたコースである場合は『REVLITE(レブライト)』を選びます。『FuelCell』のように反発性を突き詰めた素材ではないのですが、ケニアのような土地には適しているので重宝していますね。このように、その時、その場所で自分が練習でどんな感覚を得たいのか、自分の調子や環境に応じてシューズを履き分けているんです」

海外を転戦するグローバルアスリートにとって、用途やシーンによって使い分けられる種類の豊富さや性能の高さは、より重要な要素となる。ニューバランスは、そういったさまざまな路面を想定し、ユーザーの生の声を聞きながら、選手のベストパフォーマンスを支えるためのランニングシューズを生み出し続けている。

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また、スポーツシーンをスタイリッシュに彩るアスリートウェアも、田中からは好評だ。

「他のメーカーのグローバルアスリートを見ると、今年は明るめなウェアを着用する人は少なかったのですが、私たちのテーマカラーは黄色。この色によって、ダイヤモンドリーグを転戦するなかでも、ニューバランスアスリートがすごく映えていました。レースで同じウェアを着用している選手が参加していると、私も一員なんだとすごく嬉しくなるんです。​​存在感を引き立たせてくれますし、スタイリッシュなデザインにもなっているので、かなり気合を入れてレースに臨めています」

その快適さと機能性で体を支え、デザイン性を追求することでアスリートの心も高めているニューバランス。すでに田中にとって、選手人生に欠かせない大切なパートナーとなっている。

トップ・オブ・トップの一員へ。来季へ新たな誓い

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最後に、田中から来季へ向けた意気込みと、ファンへのメッセージが送られた。

「パリ五輪では決勝に進めず、その後のダイヤモンドリーグでもあとちょっとのところで日本記録に届かなかった。その要因として、目標達成をぼやかしていたことが挙げられます。私自身を超えるための、その先に行くための考え方をしてこなかった。(シファン)ハッサン選手や(フェイス)キピエゴン選手との差は、そこにあるんじゃないかと。なので、これまで“トップ・オブ・トップを目指す”と何度も言ってきましたが、いまは違う意識を持って口にするようになりました。私も早く彼女たちの一員になれるように。

そしてファンの方々には、私の進む道を見守ってくださいと、レースを通じて表現し、伝えてきました。でもこれからは、本当にトップ・オブ・トップまでの道を切り拓く姿を見せたいと思っています。たくさんの方に支えられながら歩むというより、とにかく先陣を切って、みなさんを驚かせたいです。ただ、ファンの方々はそこまで期待せずに(笑)。ぼんやり見てもらえたら嬉しいなと思います」

10月20日には、香川の屋島レクザムフィールドで行われた競技会で女子2000メートルに出場し、5分40秒89の日本新記録を樹立。また新たな領域に足を踏み入れた。日本女子中長距離のエースの快進撃は、まだまだこれからだ。