河合純一氏(日本パラリンピック委員会委員長)が語る、東京五輪・パラリンピック延期がパラリンピアンに及ぼす影響 Vol.2
現在、日本パラリンピック委員会(以下JPC)で、委員長を務められている河合純一氏は、選手時代には競泳男子(視覚障害クラス)の選手として6大会に出場。金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得された実績を持っている。 選手としても多大な実績を残されてきた河合氏に、緊張との向き合い方や、結果を出すための目標設定、さらには、来年への延期が決まった東京オリンピック・パラリンピックへの展望についてお伺いした。
白鳥淳一
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2020/06/24
河合純一氏(日本パラリンピック委員会委員長)が語る、東京五輪・パラリンピック延期がパラリンピアンに及ぼす影響 Vol.1
河合純一さんプロフィール 現役時代は、競泳男子の視覚障害クラスで活躍。パラリンピック6大会に出場し、金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した。2012年引退。現在は、日本パラリンピック委員会(以下JPC)委員長のほか、日本身体障がい者水泳連盟の会長を務められている。
――現在、JPCでのお仕事に奔走されているわけですが、日々の仕事をするうえで、欠かせないアイテム(ギア)はございますか?
緊急事態宣言が発令されてからは、それまで日課にしていたランニングをはじめ、なかなか運動が出来ない状況が続きました。 そんななかで、健康を維持するために使いはじめたバランスボールが、(新型コロナウイルスの影響で)在宅勤務を始めてからの生活に欠かせなくなりました。
パソコンでの作業を始め、ズームなどを使った取材も、このバランスボールに座りながら受けてきました。「ステイホーム」の日々を支えてきたアイテムですね。
現役時代の河合さん(2008北京パラリンピック)
――河合さんが現在準備を進められている東京オリンピック・パラリンピック。出場される日本人選手の皆さんは、自国開催のプレッシャーや緊張を感じることになると思います。結果を出すためには、どのように緊張と向き合えば良いでしょうか?
緊張には「良い緊張」と「悪い緊張」があります。緊張すると「身体がガチガチになりやすい」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、適度な緊張状態が作れないと、「自分の実力を無意識に発揮できる」というところまでは到達できないと、私は思っています。
(本番で、アスリートが結果を出すには)日頃の経験なども含めて、適度な緊張状態を作り上げるようにして、緊張とうまく付き合っていくしかないでしょうね。
――河合さんは、何事に対してもポジティブに捉えられている印象を受けます。これまでどのようにして目標に取り組み、結果を出されてきたのでしょうか?
さまざまな物事に取り組んだり、目標を設定するときには、起こりうる一番「ベスト」な状態と、「ワースト」な状態を考え、その範囲内で起こりうることや、うまくいかないことを想定したうえで検討をするようにしていました。
例えば、金メダルを取るための練習をするとしましょう。個人競技の水泳の場合には、優勝するための記録や、そのためにすべき練習を想定しやすいスポーツです。仮に、100メートルを1分で泳ぐための練習をするとした場合、私は日頃から、58秒で泳ぐ練習を積み重ねてきました。
そうすれば、もし調子が悪くても目標の1分を切れますし、「常に120%を出さないと勝てない」と思ってしまうと、余分な緊張状態を作り出してしまい、良い結果にも繋がりにくいでしょうからね。
結局は、自分ができること、やれることに集中できるか、それに尽きると思います。すると、やるべきこともシンプルになりますし、目標の作り方や練習の取り組み方も変わってきますからね。
ネガティブに考えてしまう方の多くは、自分がコントロール出来ないものに対して、目が向いてしまう傾向が見られるように感じます。
――東京五輪・パラリンピックの開催によって、新たな「夢」を抱く人が多いと思います。河合さんご自身が考える「夢」を実現させるための方法はありますか?
夢の叶え方、目標を実現させるためには、3つの要素が必要かなと思っています。 まず、一番重要なのは、本人が持った夢を持ち続け、その夢を大切にするかどうかだと思います。本人がその夢を叶えようとする限りは、実現の可能性はありますからね。そこに向かうための努力や、本気で取り組む覚悟や決意があるというのが何よりも重要です。
次に、きちんと目標までのタイムラインを引けるかどうかです。 スポーツはあらかじめ出場する大会の日程が決まっているので、準備もしやすいと思います。でも、「いつでもいいけど、いつか叶ったらいいな」と言う状態だと、目標を達成するために何をやるかが明確になっていないこともあり、結局実現できなくなってしまいます。 もし、失敗したとしても、それを再度検証しながら目標を設定し、期限内に達成を目指すというのが大切だと思います。
真剣に夢を追いかけると、その途中で困難に直面したり、壁にぶつかることもあるでしょう。そんな時に支えとなるのが、一緒に戦い、困難を乗り越えてくれる仲間です。良い仲間とともに努力しあえる環境も、自身の夢を手繰り寄せるために必要な要素だと思います。
――最後にメッセージをお願い致します。
東京で行われるパラリンピックでは、金メダル20個という目標を掲げています。私たちJPCが活動をサポートし、選手の皆さんが最高のパフォーマンスを発揮できれば、十分にクリア出来る数字だと思います。
今夏から1年程度延期されることが決まりましたが、出場される選手の皆さんが、5年間積み重ねた練習の成果を出し切れるように、私たちも尽力し、準備を進めていきたいと思っています。応援よろしくお願い致します。
【取材協力・写真提供】 日本パラリンピック委員会
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河合純一さんプロフィール 現役時代は、競泳男子の視覚障害クラスで活躍。パラリンピック6大会に出場し、金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した。2012年引退。現在は、日本パラリンピック委員会(以下JPC)委員長のほか、日本身体障がい者水泳連盟の会長を務められている。
――現在、JPCでのお仕事に奔走されているわけですが、日々の仕事をするうえで、欠かせないアイテム(ギア)はございますか?
緊急事態宣言が発令されてからは、それまで日課にしていたランニングをはじめ、なかなか運動が出来ない状況が続きました。 そんななかで、健康を維持するために使いはじめたバランスボールが、(新型コロナウイルスの影響で)在宅勤務を始めてからの生活に欠かせなくなりました。
パソコンでの作業を始め、ズームなどを使った取材も、このバランスボールに座りながら受けてきました。「ステイホーム」の日々を支えてきたアイテムですね。
現役時代の河合さん(2008北京パラリンピック)
――河合さんが現在準備を進められている東京オリンピック・パラリンピック。出場される日本人選手の皆さんは、自国開催のプレッシャーや緊張を感じることになると思います。結果を出すためには、どのように緊張と向き合えば良いでしょうか?
緊張には「良い緊張」と「悪い緊張」があります。緊張すると「身体がガチガチになりやすい」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、適度な緊張状態が作れないと、「自分の実力を無意識に発揮できる」というところまでは到達できないと、私は思っています。
(本番で、アスリートが結果を出すには)日頃の経験なども含めて、適度な緊張状態を作り上げるようにして、緊張とうまく付き合っていくしかないでしょうね。
――河合さんは、何事に対してもポジティブに捉えられている印象を受けます。これまでどのようにして目標に取り組み、結果を出されてきたのでしょうか?
さまざまな物事に取り組んだり、目標を設定するときには、起こりうる一番「ベスト」な状態と、「ワースト」な状態を考え、その範囲内で起こりうることや、うまくいかないことを想定したうえで検討をするようにしていました。
例えば、金メダルを取るための練習をするとしましょう。個人競技の水泳の場合には、優勝するための記録や、そのためにすべき練習を想定しやすいスポーツです。仮に、100メートルを1分で泳ぐための練習をするとした場合、私は日頃から、58秒で泳ぐ練習を積み重ねてきました。
そうすれば、もし調子が悪くても目標の1分を切れますし、「常に120%を出さないと勝てない」と思ってしまうと、余分な緊張状態を作り出してしまい、良い結果にも繋がりにくいでしょうからね。
結局は、自分ができること、やれることに集中できるか、それに尽きると思います。すると、やるべきこともシンプルになりますし、目標の作り方や練習の取り組み方も変わってきますからね。
ネガティブに考えてしまう方の多くは、自分がコントロール出来ないものに対して、目が向いてしまう傾向が見られるように感じます。
――東京五輪・パラリンピックの開催によって、新たな「夢」を抱く人が多いと思います。河合さんご自身が考える「夢」を実現させるための方法はありますか?
夢の叶え方、目標を実現させるためには、3つの要素が必要かなと思っています。 まず、一番重要なのは、本人が持った夢を持ち続け、その夢を大切にするかどうかだと思います。本人がその夢を叶えようとする限りは、実現の可能性はありますからね。そこに向かうための努力や、本気で取り組む覚悟や決意があるというのが何よりも重要です。
次に、きちんと目標までのタイムラインを引けるかどうかです。 スポーツはあらかじめ出場する大会の日程が決まっているので、準備もしやすいと思います。でも、「いつでもいいけど、いつか叶ったらいいな」と言う状態だと、目標を達成するために何をやるかが明確になっていないこともあり、結局実現できなくなってしまいます。 もし、失敗したとしても、それを再度検証しながら目標を設定し、期限内に達成を目指すというのが大切だと思います。
真剣に夢を追いかけると、その途中で困難に直面したり、壁にぶつかることもあるでしょう。そんな時に支えとなるのが、一緒に戦い、困難を乗り越えてくれる仲間です。良い仲間とともに努力しあえる環境も、自身の夢を手繰り寄せるために必要な要素だと思います。
――最後にメッセージをお願い致します。
東京で行われるパラリンピックでは、金メダル20個という目標を掲げています。私たちJPCが活動をサポートし、選手の皆さんが最高のパフォーマンスを発揮できれば、十分にクリア出来る数字だと思います。
今夏から1年程度延期されることが決まりましたが、出場される選手の皆さんが、5年間積み重ねた練習の成果を出し切れるように、私たちも尽力し、準備を進めていきたいと思っています。応援よろしくお願い致します。
【取材協力・写真提供】 日本パラリンピック委員会
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