バレーボール女子日本代表・古賀紗理那が笑顔の引退。“サプライズ登壇”の夫・西田有志に感謝「苦しい時にずっと味方でいてくれた」
バレーボール女子日本代表キャプテンの古賀紗理那(NEC)が8月16日、都内のホテルで引退会見を開いた。会場には、所属チームであるNECレッドロケッツの金子隆行監督と、男子日本代表の夫・西田有志が駆けつけ“サプライズ登壇”。労いに駆けつけたふたり、そしてパリ五輪まで支えとなった関係者やファンへ感謝の気持ちを述べながら、改めて自身の言葉で現役から退くことを発表した。※メイン画像:筆者撮影
メダル届かずも「最高のチーム」で戦い抜いたパリ五輪
古賀はパリ五輪開幕前の7月9日に現役引退を表明。競技人生の集大成として臨んだ大会だった。しかし、グループステージでポーランド、ブラジルに敗北。ケニアには3-0で勝利したものの、1次リーグ敗退が決定。涙とともにコートを去った。
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記者会見に笑顔で登場した古賀は、開口一番「緊張しています。本日はお忙しいなか、お集まりいただき本当にありがとうございます」とあいさつ。続けて「パリオリンピックの試合を持ちまして、9年間のプロバレーボール選手としてのキャリアを終える決断をいたしました」と話した。
パリでの戦いについては、「目標であるメダルには手が届かなかった。そこは本当に悔しかったです。けれど、チームとして戦うためにずっと練習してきて、その積み上げてきたものは少しも消えないと思っています。私含めて、みんな本当に頑張った大会でした」と振り返った。
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結果的にケニア戦が選手としてのラストマッチとなったが、他国の結果次第で決勝トーナメント進出の可能性もあった。それでも「ほぼほぼ最後になるな、というのは気持ち的にわかっていた」という。
そのことを、チームスタッフも理解していた。選手を集め、「紗理那のためにも頑張ろう!」と声を出し、メンバーを鼓舞。その瞬間「泣きそうだった」と試合直前に感極まっていたことも明かした古賀。ケニアにストレート勝ちをした後も、「最高のチームだったなと思いつつ、ちょっと悲しい気持ち」で仲間たちとの最後の時間を過ごした。
現地に応援に駆けつけていた家族とも会えたといい、「ケニア戦の後に一緒に写真を撮れたので、それもとてもいい思い出です」と嬉しそうに話した。
「女子日本代表主将・古賀紗理那」を支えたNECの存在
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思い返せば、2020年東京大会、オリンピックのデビュー戦となったのは奇しくもケニアとの試合だった。その第3セット目に足をひねり、負傷退場となった古賀。その後の2試合を欠場したこともあり、チームに勢いが生まれなかった。
「自分の中ではずっとかけてきた大会だったので、気持ちも本当に落ちてしまっていた」と当時の心境を吐露。だがその経験がパリ五輪への執念となって、古賀を再びコートに立たせる原動力となった。
「まだまだやり残したことがあるんじゃないか、というのはずっと心の中にあって。自分の気持ちが終わったからもう日本代表には行きません、というのは全然納得できないと思いましたし、後悔するなと感じました。この悔しさを晴らすために、絶対にパリオリンピックに出場するという強い気持ちが出てきたので、またやろうと決意しました」
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その思いが「日本代表キャプテン・古賀紗理那」誕生にもつながった。
「パリ大会まで先頭に立ってチームを引っ張っていきたいと思えたので、最後まで全力で走り続けようという気持ちでずっとやっていました」
だか、主将として代表を牽引するプレッシャーの大きさは計り知れないものがある。その中で最後まで走り続けられたのは、彼女の抱える負担を軽減し、競技に専念してもらうことを重要視した、所属チームであるNECレッドロケッツの存在が大きかったという。
「日本代表の時はキャプテンをしていましたが、NECではそういう役割としての仕事はまったくせずに、私自身が成長することだけにフォーカスして取り組むことができました。そのおかげで、自分の成長を実感しながら楽しんで過ごせた3年間だったと思います。正直、キャプテンとして臨む日本代表では勝手に自分の中で背負いこんでしまい、気持ち的にキツくなる部分が多かった。そういう悩みを聞いてくれる仲間や所属チームのみんなに支えられたからこそ、ここまでやってこれたんだと思います」
古賀の「恩師」と「夫」が“サプライズ登壇”!
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記者会見が終盤に差し掛かると、花束贈呈プレゼンターとして、古賀の成長や活躍を近くで見続けてきたNECレッドロケッツの金子隆行監督が登壇。互いに笑顔であいさつを交わしながら贈呈式を行った。
金子監督は「本当にバレー界のために全力を尽くしてもらって、すべてを懸けて戦ったと思うので、これからは第2の人生を存分に楽しんでほしいと思います。本当にありがとうございました」と日本女子バレー界の功労者に感謝の気持ちを伝えた。
それに対して古賀は「金子さんは本当に私を最後まで信頼してくれて、調子が悪い時でも絶対外さずに、我慢して使ってくれました。そのおかげで成長できたと思っています。今年のVリーグも全力で応援しますし、優勝を目指して頑張ってほしいです」とエール。今後はOBとして、そしていちファンとしてNECを支えていく。
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さらに、男子日本代表の夫・西田有志がサプライズ登場。“妻”からのリクエストで夫婦でのフォトセッションに応じると、司会者から「予定にはなかったんですけれども、一言いただいてもよろしいですか?」と急きょコメントを求められた。
西田はしどろもどろに「まず、みなさん足元の悪い中、来ていただいてありがとうございます」と報道陣へ一言。その後「(古賀に)奥さんになっていただいたんですけど、なんて言うんですかね……難しいですけど、とにかく長い現役生活お疲れ様でした。自分は現役としてまだまだ続けていきますけど、引き続き自分たちでいい家族を築いていけたらいいなと思います」と最愛の妻を労った。
その時、古賀はあえてコメントは控えたが、会見中には「私はむかつくことも楽しかったことも、思ったことをすぐに言っちゃう性格なので、本当に大変だっただろうなと思いますけど、苦しい時は絶対に私の味方でいてくれたので、とても感謝しています。これからは夫のお世話を頑張りたいです」と照れ笑いを浮かべながら話していた。
笑顔の引退。第2の人生へ
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引退会見のプログラムをすべて終えた古賀は、時折笑顔を覗かせながら、ゆっくりと、報道陣とファンに向けて最後のメッセージを送った。
「本日はお忙しいなか、こんなに多くの方に集まっていただき感謝しています。これからは選手ではなくなりますが、今までたくさんの方に取材していただいて、私自身いろんなところで成長できました。ファンのみなさんには調子がいい時も、苦しい時もずっと背中を押してもらって、一緒に戦ってくださって感謝の気落ちでいっぱいです。たくさんの方の応援のおかげで、私はここまで現役を続けることができました。今後のことについては未定なんですけど、少しでもバレーボールに携わっていけたらいいなと思っています。本当にありがとうございました」
報道陣から大きな拍手で送られながら会場をあとにした古賀。最後まで彼女らしい“紗理那スマイル”で緊張感のある雰囲気を和ませていた。第2の人生では、その笑顔がさらに輝くような、幸せな未来になるよう願うばかりだ。