バスケットボール日本代表“渡邊雄太”、大黒柱として挑んだパリ五輪ー夢の舞台でのリベンジへ
NBAでの戦いを終えた渡邊雄太のシーズンオフ。「勝負の年」と語る渡邊選手が見据えていたのは、東京大会で3戦全敗に終わったオリンピックでのリベンジだった。※トップ画像出典/Getty Images
束の間のオフにも関わらず過酷なトレーニングに励む理由
NBAで6年間の戦いを終えた渡邊選手は、束の間のオフシーズンをハワイで過ごしていた。アロハシャツショップで選んだ渾身の1枚は“勝負の年”にふさわしい虎が描かれたものだった。「今のうちにしっかり休んで夏に備えたい」とパリ五輪前、ゆったりバカンスを楽しんでいるのかと思いきや、そこには朝4時半のビーチで過酷なトレーニングに励む渡邊選手の姿があった。
「バケーションに来て少し気がゆるんでいるときにこそ、頑張れる人がきちんと結果を出せる人だと思います」と語る渡邊選手。このストイックさこそが、トッププレーヤーであり続ける理由なのだろう。「バスケットをやっていないと落ち着かない」と、ハワイの体育館にもその姿はあった。
パリ五輪に向け「新たな武器」を磨き夢の舞台でのリベンジを誓う
パリ五輪に向けて渡邊選手は、「新たな武器」を磨いていた。それは、ドリブルからシュートまでの一連の動きを指す“プルアップ”だ。NBA時代の渡邊選手は、スペースを作り、ボールをもらったらすぐにシュートを打つという役割を担っていたが、これからはプレースタイルも変わってくるのだという。「ボールに触れる時間はNBAのときよりも確実に増える。自分で打開できる武器をもっと身につけなければならないと思っています」と渡邊選手は語る。
意識するポイントはディフェンスの相手との距離を保ったままシュートモーションに入ること。「相手との距離を作っていてもシュートまでが遅いとすぐに詰められてしまうので、より早くシュート体勢に入れるようにすることが大切です」と、パリ五輪までに技を磨き、夢の舞台へのリベンジへの努力を続けていた。
パリ五輪対戦国を分析、日本が勝利するために必要だったこと
パリ五輪、初戦の相手は去年のワールドカップ優勝国のドイツ。ワールドカップ予選では61‐81と18点差で敗れた相手だ。特に警戒すべき選手は、ワールドカップMVP・ドイツの司令塔“デニス・シュルーダー”選手だと渡邊選手は語っていた。
「ドイツはシュルーダー選手が起点となり攻撃が始まるので、まずはシュルーダー選手を自由にさせないこと。そして、日本がスリーポイントを高い確率で決め続けることも必要。ドイツを少しでも焦らせることができれば、勝つチャンスは必ずくると思います」
続く2戦目は開催国フランス。「“規格外”という言葉は彼のためにある」と渡邊選手が言うほどの恐るべき人物がいる。今シーズンNBA最優秀新人賞に選ばれた“ビクター・ウェンバンヤマ”選手だ。身長2m24cm、ゴール下だけではなくドリブルをスリーポイントシュートも得意な選手。
渡邊選手は「今までのNBA選手とは全く違う。とにかく型にはまらない、人類が見たことのないタイプの選手です」と評する。そんなウェンバンヤマ選手擁するフランスに勝利する秘訣については「ドイツに続き大変な相手ですが相手のリズムを狂わせるようなタフなディフェンスをして、日本のオフェンスを一番高いレベルでやりきること」と決意を新たにしていた。
自分と仲間を信じて挑むパリ五輪での目標はベスト8
パリ五輪まで残り1ヵ月、日本代表は2日間に渡り強化試合をおこなった。相手は東京五輪銅メダルの強豪オーストラリア。まだ代表合流前だったため、テレビ中継にゲスト出演した渡邊選手は「僕もすごく緊張している」と気持ちはすでにコート上で戦うチームの一員だった。
強化試合1戦目は89-90、2戦目が95‐95と粘り強いプレーで善戦した。「勝てなかったことは残念だが、若い選手中心といってもオリンピック3位のチームに対していいプレーがたくさんあった。高さで負けている分、コート全体を使ってディフェンスをしていた。これはパリ五輪でも必ず必要になる。次につながる試合だったと思います」と自身も闘志を燃やしていた。「パリ五輪はベスト8という明確な目標がある。今の日本代表チームはそれを成し遂げる力があると全員が信じている。自分たちのやってきたことを信じて戦ってきたいと思います」と、日本の大黒柱として挑むパリ五輪への意気込みをそう語っていた。
出典/Getty Images
残念ながら今年のパリ五輪で、日本は男子・女子ともに予選3連敗という結果に終わった。特に2戦目のフランスには善戦していた日本男子だが、目標としていたベスト8進出は叶わなかった。
“渡邊雄太”不屈の挑戦はこれからもまだ続く
今年4月NBA引退会見で「これからもいろんな戦いや挑戦はもちろん続いていくけれど、楽しんでバスケットがしたいと思っています」と語った渡邊選手。
決して恵まれた環境ではなかったが、それを言い訳にせず目指したNBA。がけっぷちから這い上がりつづけた6年間の日々。親子でつないできた日の丸への想い。自力でつかみ取った夢舞台への切符。
渡邊選手の不屈の挑戦の日々は“楽しさ”と共にこれからもまだ続いていく。
『渡邊雄太 不屈の挑戦|バスケ☆FIVE 特別版 #3 夢舞台のリベンジへ』より
配信日:2024年7月1日(月)~ 全3回3夜連続配信
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています