挑戦の先に見た栄光と挫折ー斎藤佑樹と萩野公介が今だから明かす心の葛藤とは
高校時代に一躍脚光を浴び、それぞれの競技で一時代を築いてきた斎藤佑樹と萩野公介。『GET SPORTS 萩野公介×斎藤佑樹 スペシャル対談 生き様のキャッチボール 完全版 「#1 栄光と挫折」』では、共通点を多く持つ2人が味わった経験にスポットを当て、当時の心境やエピソードを対談形式で明かした。※トップ画像出典/Getty Images
多くの共通点がある斎藤と萩野
斎藤は1988年生まれの元プロ野球投手。高校時代にはエースとして2006年夏の甲子園で優勝し「ハンカチ王子」の愛称で親しまれた。その後、早稲田大学へ進学し、2010年にドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団。ルーキーイヤーこそ6勝を挙げたが、その後は怪我に悩まされ、2021年に現役を引退した。現在はテレビキャスターとして自前のカメラを手に、さまざまな現場を訪れ、精力的な取材を続けている。
一方、荻野は1994年生まれの元競泳選手。2012年ロンドン五輪で高校生ながら銅メダルを獲得し、2016年リオ五輪では400m個人メドレーで金メダルを含む3つのメダルを獲得。2021年には東京五輪で3大会連続オリンピック出場を果たした。その東京五輪を最後に現役引退し、現在は大学院で学びながら解説者として競技を伝える側に回っている。
そんな2人には多くの共通点がある。高校時代に一躍脚光を浴びたものの、プロ入り後は怪我やスランプに苦しんだ。競技生活を終えたのも2021年と同じだ。
「体の一部だった水泳が嫌になった」萩野が明かす挫折の瞬間
番組では、箱の中からテーマが書かれたカードを引き、トークが展開された。最初のテーマは「栄光と挫折」だ。
「ずっと水泳をやられてきて、ずっと楽しかったですか?」と斎藤に聞かれた萩野は即座に「いや、そんなことないですよ」と答えた。生後6か月からベビースイミングで水泳を始めた萩野にとって、水泳は物心つく前から生活の一部だった。しかし「体の一部みたいになっていたものが、嫌だってなった瞬間が、やはり一番大きな挫折かな」と振り返った。
「怪我が影響していますか?」という斎藤の質問に「怪我をしたことによって、自分の体が自分じゃなくなるみたいな感覚がある。ただ、怪我を抱えながらでも続けている選手はいるし、僕自身も怪我をした中でやりくりしていた感じはあった」と明かす。続けて「僕自身は水泳の中で、こういう風にストロークをしたい、そういう風に泳ぎたいみたいな感覚がすごく強かった。結果、何秒であれ関係なく、純粋にいい泳ぎをしたくなった」と心境を語った。出典/Getty Images
2011年世界水泳の選考会直前に襲ったトラブル
ロンドン五輪初出場への道のりも順風満帆ではなかった。萩野はその前年、前哨戦となる2011年世界水泳の選考会に出場しなかった。実は選考会の前夜に脱水症状をおこし、救急搬送されていたのだ。「だから12年の(五輪)選考会でスタート台の前に立てたときに、すごくうれしかったです。当たり前なんですけど『今年は出られたよ』と思いましたし、それで泳いで代表を獲得できた」と狙って獲得した代表の座ではなかったことを強調。「一つずつ積み重ねて、その瞬間が来たなみたいな感覚のほうがすごく強かった」と振り返った。
「水泳を水泳だけで解決するな」恩師・平井伯昌コーチの教え
荻野には、心強いコーチの存在もあった。斎藤から水泳に対する向き合い方について尋ねられると、萩野は「良く言えば、一つのことに集中できる。悪く言えば、こうしかできない」と話しつつ、恩師である平井伯昌コーチから受けた「水泳を水泳だけで解決するな」という教えを紹介。それは泳ぎの不調原因はテクニックだけではなく、日常生活の睡眠や食事などが影響していることを自省すべき、というものである。
「もう少し自分に優しくできたら」現役時代の過度な自己批判に後悔
「(ストレスに対して)ベクトルが内側(自分)に向く人だった。世間から求められているものと今の自分とのギャップみたいなものを、自分自身に対して矢印を常に向け続けていた」と自己分析する萩野。自分が自分に一番厳しかったという萩野にとって、平井コーチの教えは感じることがあったのだろう。「もうちょっと、自分に優しく生きられたら良かったのにとすごく思う」と後悔の念を吐露した。それでも現役時代については「後悔はありますけど、納得はしています」と語る。
この荻野の発言に斎藤も同意した。「抑える、抑えないって、結果でしかない。指からボールが離れた瞬間は、もう僕には何もコントロールできない。それに対して、僕は感情を左右されるのはやめよう」と思ったことを明かした。「やるべきことは決まっている。それだけに集中して頑張ろうと気づいたのが25、6歳の時だったんですよね。もう選手としては中堅…」と気づくのに時間がかかったことを悔やんでいた。
『GET SPORTS 萩野公介×斎藤佑樹 スペシャル対談 生き様のキャッチボール 完全版 #1「栄光と挫折」』
放送:2022年6月5日(日)
内容:高校時代から脚光を浴び、世代の中心となり、それぞれの競技で一時代を築いてきた、萩野公介と斎藤佑樹。似た境遇を持つ2人が味わった”栄光と挫折”とは!?
※記事内の情報は配信時点の情報です