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ペプシ片手に躍動!綿貫、世界17位を撃破した怪我からの大逆転劇【BNPパリバ・オープン2025】

綿貫陽介がBNPパリバ・オープン2025で大躍進した。今回はプロテクトランキングを利用し試合に出場した彼だが、予選を難なく突破し、本戦でも驚異的なプレーを連発。3回戦では、地元アメリカの17位選手であるフランシス・ティアフォーを撃破し、話題に。さらに試合中に自身のコーチにならって「ペプシ」を飲んでパフォーマンスをあげるというユニークな一幕も注目を集め、テニスファンの記憶に残る試合となった。※トップ画像出典/Pixabay(トップ画像はイメージです)

Icon img 9605 1  1 髙橋菜々 | 2025/04/15
綿貫の試合は、とにかく観ていてワクワクする。彼がプレーする姿から、テニスそのものを心から楽しんでいる様子が伝わってきて、見ているこちらまで楽しい気持ちにさせられるのだ。ミスを恐れず攻め続ける姿勢には胸を打たれるし、ときには突然テニスボールでリフティングを始めるような、遊び心あふれる一面も彼の魅力だ。そんな人間味のあるプレースタイルは観客の共感を呼び、アウェーの試合でも徐々に応援が増えていく。実際、今回の3回戦では地元選手が相手だったにもかかわらず、「綿貫コール」が巻き起こったほどだ。今回はそんな彼の試合を振り返っていく。

怪我を乗り越え、再出発した綿貫

毎年3月前半、アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されるATP1000「BNPパリバ・オープン」(通称:インディアンウェルズ・マスターズ)。今年の大会で注目を集めた選手の一人が、世界ランキング349位の綿貫陽介だ。綿貫は昨年1月、膝の負傷により2月にツアーからの離脱を余儀なくされ、9月にツアー復帰を果たした。今回のインディアンウェルズには、プロテクトランキングを用いて出場している。このプロテクトランキングとは、怪我などで6か月以上ツアーを離れた選手に対し、離脱前のランキングを考慮し一定の大会へのエントリーを認める制度である。選手が直近52週間(約1年間)に出場した大会のうち、獲得ポイントが多かった上位18大会の合計で決まっていくAPTランキングとは異なり、長期離脱中もランキングが下がることなく、限られた大会で使用できる仕組みとなっている。

2年ぶりの出場を果たした綿貫は、予選では2試合を勝ち抜き、本戦入りを果たす。そして本戦でも快進撃を続け、4回戦まで進出する大躍進を遂げた。格上の選手を破る番狂わせの勝利に加え、彼の誠実な人柄にも世界中のテニスファンが魅了されたことだろう。

世界17位のティアフォー撃破!記憶に残る3回戦の勝利

3回戦では、地元アメリカの人気選手であり、世界ランキング17位のフランシス・ティアフォーと対戦。綿貫は6-4、7-6でストレート勝ちを収め、番狂わせを起こした。第1セットから綿貫は攻めの姿勢を貫く。ラリー戦から前に出てボレーを決める場面では、ポイントを獲得したあと、両手を広げて上を見上げながら会場の歓声を浴びていたのが印象的だった。第1セット8ゲーム目のリターンエースも何度も見返すくらいにかっこよかった。リターンを打つ際、構えていた位置からさらに一歩前に出て打ち、時にはコート内に入って打っており、それが次への攻撃に繋がっているのではないかと感じた。第2セットでも綿貫の勢いは止まらなかった。サービスゲームをブレイクされた場面もあったが、崩れることなく試合を展開。ショートクロスへのスライスで相手が届かないコースを突いたり、ネットに当たって浅く落ちた球をダッシュで拾い、返ってきたロブをスマッシュでたたきつけたりと、多彩なショットに驚かされた。角度をつけたコースで相手を外に追いやり、コートにスペースを作って仕留めるプレー。さらに、打つタイミングをずらし、相手の逆を突くショットも見事だった。パワーのあるティアフォーに対し、綿貫は力強いストロークとコースを突く冷静なプレーで応戦し、見事勝利を掴んだ。

4回戦では、世界ランキング43位のタロン・フリークスポールと対戦。第1セットはタイブレークの末に落とし、続く第2セットも1-6で敗戦。8強入りは惜しくも逃す形となったが、この大会で見せた綿貫の快進撃とプレーの質の高さは、多くのファンに強烈な印象を残したことだろう。復帰を果たし、プロテクトランキングでの出場ながら、トップ選手たちと互角以上に渡り合い、ミスをしても臆することなく攻めの姿勢を崩さなかった。そんな姿に、観客も次第に綿貫の味方になっていったように感じた。この試合は、世界中のテニスファンの記憶に残ったに違いない。

話題沸騰!?勝利の影には“ペプシ”があった

3回戦での番狂わせの勝利で一躍注目を集めた綿貫だったが、話題になったのはプレーだけではなかった。テニスファンの間で密かに盛り上がりを見せたのが、試合中に綿貫が飲んだ「ペプシ」だ。

第2セットの第9ゲーム終了後、4-5でのコートチェンジのタイミングで綿貫は審判に「ペプシありますか?」と要求。まさかのリクエストに驚いたファンも多かったが、これは自身のコーチであるウェイン・フェレイラが現役時代、ファイナルセットで糖分補給としてペプシを飲んでいたことをふと思い出したためだったという。その後、実際に手にしたペプシをボックス席のコーチに見せながら笑顔を見せ、一口飲んでリフレッシュ。まるで野球のベンチに戻るかのような自然さとユーモアに、会場は和やかな雰囲気に包まれた。そしてその直後から、綿貫のフォアハンドのスピードが上がり、キレが増したようにも見えた。この“ペプシ補給”シーンはSNSでも話題となり、「綿貫=ペプシ」のイメージが定着しそうな勢いだ。今後のテニスコートでペプシを飲むプレイヤーを見かける日も来るかもしれない。