“体操界のキング”内村航平「もう、自分は駄目だ」“人生最大の壁”を前に執念を貫いた生き様
最年少19歳での五輪初出場から4大会連続で代表入りし、3つの金メダルを含む7つのメダルを獲得した、日本体操界のエース内村航平。その“美しい体操”で日本を熱狂させ、世界選手権個人総合にて6連覇の偉業を成し遂げた内村選手が、配信サービス「Lemino」のドキュメンタリー番組『Number TV』にて、栄光の裏にあった挫折について掘り下げる。※トップ画像出典/Getty Images
世界選手権を途中棄権させた王者の演技を阻む“怪我”
2017年の世界選手権、個人総合の舞台。7連覇を狙う内村選手を、演技を続けられないほどの痛みが襲った。2種目目の跳馬で左足首を負傷。続く平行棒では、着地の瞬間に大きく顔を歪ませて苦悶し、以降の演技を断念した。
内村選手は、負傷の原因を「年齢的な焦りと、下(の世代)から追い上げてくる勢い。そこで難度を攻めすぎた」と分析。しかし、プレッシャーの根源である“肉体の衰え”については、考えるほどに面白さを感じたという。「どうやったらこの壁を越えられるか」自問自答を通して、課題の攻略法を探る日々が始まった。
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苦境を乗り越える道標となった“スペシャリスト”との出会い
番組内には、内村選手の活躍を支えた2人のスペシャリストが登場する。1人目は、肩の痛みに苦しんだ2019年の世界選手権以後、治療を担当したスポーツ障害の専門家・宮武医師。内村選手は「体操」、宮武医師は「医療」、それぞれが己の道を究めたいーそんなプロフェッショナル同士の出会いだった。
次に名が挙がった人物は、内村選手の専属コーチである佐藤氏。途中棄権を経験した2017年から5年間、キングの活躍を間近で支え続けた人物だ。実は佐藤氏は高校時代からの内村選手の親友でもある。それまで他人の意見に否定的だった内村選手だが、信頼できるコーチと課題を共有し、連携することによって、人間としての成長にも繋がったという。
己の全てを賭けた東京五輪にて悪夢の“予選敗退”
東京五輪が開かれた2021年7月。32歳になった内村選手は、出場種目を鉄棒一本に絞り、代表選考を勝ち抜いた。しかし、そこでオリンピックの魔物がキングを襲う。高難度の技を決めた後、これまで失敗したことのないひねり技で落下。予想もしていなかった“予選敗退”を喫した。
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「夢かと思いましたね。人生で一番、精神的にきました。肩が痛い状態から、鉄棒に絞ってまでオリンピック行って。絶対金メダルが取れるフラグを自分で立てたにも関わらず、まさかの落下。こういうオチがあるんだ…」と、自身が抱いた失望の大きさを語った。
失意の五輪から2ヶ月で見せた“復活”
予選敗退が大々的に報じられた後、内村選手は誰とも会いたくない感覚に襲われたという。
「『自分はダメだ』って自己否定もしましたし、なんのためにやってきたんだというのもありました。全てのことに原因がある。代表が決まってから、満足しちゃってた。準備はもちろんしたけれども、上がりきらない自分がいた」
自らを孤立させ、悩み抜いた三日三晩。引退説が飛び交うなか、内村選手は答えの出ない悔恨に区切りをつけ「東京の終わり方では終われない」と前を向く。そして、わずか2ヶ月という短期間で、地元・北九州市開催の世界選手権に出場。不調の中、見事決勝に進出し、6位入賞を果たした。
内村選手が“挫折”から得たものは何だったのか
苦境に立たされるたびに、その壁をどう乗り越えるかを考えてきた内村選手にとって、“挫折”とは、どのようなものだったのか。
「挫折によって、『人間として必要な感情を得られた』気がします。人とは違う人生を歩んできて、同じ人間とは思えないと言われてきたけれど、結局“人”なんですよ」
“挫折”を執念で乗り越え、自分らしい体操を追い続けた内村選手。「壁にぶちあたった時、どうしたらいいか」との問いかけにも、困難を乗り越えた経験があるからこそ、前向きな言葉が生まれるという。
「どんな状況でも諦めない人の方が、人に勇気とか希望を届けられるし、そういう人の言葉の方が胸に響く」と語る、内村選手。現役を離れた現在も、80歳まで鉄棒をすることを目標に“自分のため”に研鑽を続けている。
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『NumberTV』
挫折地点~あのとき前を向いた理由~
タイトル:#3 内村航平
配信日:2024年9月26日(木)0:00~ 全24回配信(月2回配信予定)
內容:トップアスリートの「挫折」と「復活」をテーマにしたドキュメンタリー番組。過去の写真が飾られた特別な空間(Number Room)で、アスリート本人がこれまでの人生を振り返り、挫折の瞬間や前を向けた理由について語る。
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