朝倉環奈,超越戒指——治癒心靈並發現「新我」的旅程
「闘い続けた日々の先にあったのは、勝利でも敗北でもなく、自分自身と向き合う時間だった」浅倉カンナが引退後に見つけたのは、“格闘技がない人生”を楽しむという新たな挑戦。リングを降りた今だからこそ語れる、静かな日常の中で見つけた気づきと、再び歩き出すための小さな一歩。その先に彼女が描く未来とは――。※メイン画像:撮影/松川李香(ヒゲ企画)

入場シーンは苦手。でも、スイッチが入る瞬間は確かにあった
──僕、格闘家の方々の入場シーンがすごく好きなんです。自分を奮い立たせたいときに、つい見たりするんですけど、カンナさんはどうですか?
実は…入場、めちゃくちゃ苦手なんです(笑)。
入場が大好きな選手ってたくさんいるじゃないですか。あの瞬間を楽しんで、「俺、かっこいい!」みたいな感じで盛り上がる選手もいるんですけど、私は全然楽しめなかったですね。
もう、「試合がしたい!」という気持ちが強すぎて、入場どころじゃないんですよ。
周りを気にする余裕もなくて、入場中はずっと「絶対倒すぞ!」っていうメンタルでした。
──最後の引退試合では、その気持ちに変化はありましたか?
ありましたね。「最後ぐらいは楽しもう」と思って、セコンドにも「今日だけはゆっくり歩くね」って言ったんです(笑)。だから、あの試合だけはちょっと特別だったかな。でも、基本的にはやっぱり入場は苦手でしたね。
──格闘技って、生きるか死ぬかみたいな、極限状態じゃないですか。カンナさんは、試合モードのスイッチをどうやって入れていましたか?
私はルーティンとか、あまり気にしないタイプなんです。
「これをやったら必ずスイッチが入る」みたいなものはなくて、自然と試合に向けて気持ちが作られていく感じでした。
でも今思い返すと…アップを始めたらスイッチが入っていたのかもしれないです。
試合の数試合前からウォームアップをするんですけど、動き出すと自然と集中モードに入るんですよね。
──その後、入場曲が鳴った瞬間に、さらにもう一段階スイッチが入るんですか?
控え室で入場曲を聞いた瞬間に、「よし!」って気持ちが切り替わる。
だから、最終的なスイッチはやっぱり入場曲が鳴った瞬間かもしれないですね。
──入場曲はAIさんの『ハピネス』でしたよね?
そうですね。『ハピネス』を入場曲にしていました。あの曲も気合が入るんですけど、試合前にセコンドの鶴屋さんに背中をバンッと叩いてもらうのも、スイッチが入る瞬間でしたね。その瞬間が、一番「もうやるしかない!」ってなる瞬間だったかもしれないです。
リングを降りた後の私—心を癒す時間と大切な相棒

──そんな壮絶な試合を終えた後、どういう風に過ごしていましたか?
20代前半くらいまでは、「試合に勝っても負けても、次の日から練習!」みたいな生活をしていたんですけど、ある時から「休むのも大事」って気づいて。
ここ3年くらいは、試合のたびに旅行に行っていましたね。やっぱり、体だけじゃなくて心を休める時間が必要だなと思うようになったので。
家族と行くことが多かったんですけど、「朝起きて走りに行かなくていい」「練習を考えなくていい」っていう、その時間が本当に最高でした。
──試合が終わってから、どのくらい休むかは決めていましたか?
それはその時々で全然違いましたね。次の試合がすぐ決まりそうな時は、ゆっくりできないし、逆にまだ予定がない時は「今のうちにゆっくりしておこう」ってなるし。
格闘技って、試合の間隔がバラバラなので、毎回休み方が違っていました。試合がすぐ決まりそうな時は、旅行にも行かないこともありましたね。
──カンナさんって、格闘技以外にハマっていたものとか、作品を観る習慣とかありました?
本当にないんですよね(笑)。ほんとに、格闘技ばっかりやってて、オフが1日あったら、友達と遊ぶか、家族と出かけるかって感じでしたね。買い物もたまに行ってたけど、特に「決めてやる」というわけじゃなくて、気が向いたら行くみたいな感じでした。
だから、格闘技中心の生活ではありつつも、うまくバランスを取っていたと思います。
──格闘家って、何か特別なものを買って「自分の証」みたいにする人も多いですよね。カンナさんも、何かご褒美的に買ったものはありますか?
2017年のトーナメント優勝した賞金で、車を買いました!ちょうど免許を取ったばかりだったので、「何か形に残るものを買おう」と思って、MINI COOPERを買いました。
今もずっと乗ってます。愛着が湧いちゃって。自分がトーナメントの賞金で買った車なので、やっぱり特別な存在ですね。
引退後の新章へ—心の変化と新しい挑戦
──去年の『超RIZIN3』で引退を発表された時、「あ、そうなんだ!」って驚いたんですけど、あの辺の心境ってどんな感じだったんですか?
実は、引退を決めたのはもう少し前の段階でした。
これまでずっと「100%格闘技と向き合う」ことが当たり前だったんですけど、それが最近できなくなっているなと感じ始めたんですよね。
以前は、他の選手の試合を見て「自分も早く試合したい!」って思ってたし、いつも「どうやったら強くなれるか」を考えていたんですけど、それが少しずつ薄れていって…。
「この状態で続けるのは違うかもしれない」と思ったときに、自然と引退という選択肢が見えてきました。
──引退試合となった伊澤選手との試合を終えてから、もう4ヶ月が経ちましたね。引退後の生活はどうですか?
めっちゃ最高です!(笑)
去年は意外と忙しくて、挨拶回りとかいろいろやることが多かったんですけど、今年に入ってからはすごくゆっくり過ごせています。
正直、「格闘技がなくても楽しい!」って思ってますね。もちろん、格闘技は大好きなんですけど、今は「次に何をしよう?」っていうワクワク感があって、また新しい挑戦を成功させたいなと思っています。
──YouTubeでチラッと見たんですけど、引っ越しを考えているんですか?
はい、そうなんです!
これまではずっと地元の千葉県に住んでいて、ジムも地元にあったので、都内に出ることがなかったんですけど…「環境を変えてみるのもアリかな?」と思って、初めて都内に引っ越す予定です。
──地元が好きなのに、引っ越すのはちょっと挑戦?
そうですね。本当は地元が大好きなので、ずっと千葉にいたい気持ちもあるんですけど、「一度、新しい環境に身を置いてみよう」と思って、思い切って都内に行くことにしました!
次なる挑戦は“心も鍛える”ジム作り――新たな目標への第一歩
――今後の展望について、YouTubeでジムをやりたいとおっしゃってましたよね?今、どういう構想をイメージされていますか?
今のところ、まだ具体的には進められていないんですけど、今年に入って1ヶ月ゆっくり過ごしてみて、「やっぱり目標があったほうが楽しいな」と思ったんですよね。
なので、次はジムを出すことを目標に、今年1年頑張ろうかなと思っています。何かに向かって努力している方が、やっぱり充実するなって感じますね。
──女性専門のジムとかではなく?
そうですね。男性も入れるジムにするつもりです。ただ、選手を育てるジムではなく、フィットネス寄りのジムにしたいなと思っています。キックボクササイズとか、ミット打ちやサンドバッグを叩いたりする感じですね。
──サラリーマンの方が仕事帰りにミット打ちなど、最近多いですよね。
そうそう!そんな感じですね。仕事終わりに軽く運動して、「スッキリした!」って帰れるようなジムがいいなと思ってます。シンプルに、運動して汗をかくだけで気持ちが上がるじゃないですか。
自分自身も、気分が落ちたときは運動してテンションを上げるタイプなので、そういう「気持ちをリセットできる場所」を作れたらいいなと思っています。運動って、身体だけじゃなくて気持ちも前向きにしてくれるので、そういう場を提供できるようなジムを作りたいなと思っています!
浅倉カンナ(あさくら・かんな)
1997年10月12日生まれ、千葉県出身。幼い頃からレスリングを始め国際経験も持つ。2014年10月、17歳でプロデビューを果たすと、女子高生ファイターとして注目を集める。16年末よりRIZINに主戦場を移し、17年スーパーアトム級GPでは大晦日の準決勝でマリア・オリベイラに腕十字を極め、決勝ではRENAの打撃に臆することなくタックルを仕掛け、得意のバックチョークで絞め落とし優勝を果たした。18年と21年にタイトルマッチも経験。2024年9月『RIZIN.48』にて王者 伊澤星花との試合をもって現役を引退した。
Hair&make:Chiyo Kato (PUENTE.Inc)
Photo:Rika Matsukawa