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全豪オープン男子シングルス、日本人選手たちの熱戦と次なる挑戦

2025年が幕を開け、世界四大大会の一つ「全豪オープン」がオーストラリアで熱戦を繰り広げている。画面越しに感じる選手たちの情熱的なプレーに心を動かされ、試合後、外に出ると日本の厳しい冬の寒さを感じ、まるで別世界に引き戻されるような感覚を味わう日々が続いている。今年も日本の選手たちは見事な活躍を見せ、多くの感動を届けてくれた。今回は本戦に出場した日本の男子選手たちに焦点を当てて語ろうと思う。※メイン画像:出典/Getty Images

Icon img 9605 1  1 髙橋菜々 | 2025/01/26

「全豪オープン」は、テニスの世界四大大会(グランドスラム)の一つで、毎年1月にオーストラリア・メルボルンで開催される大会である。グランドスラムの幕開けとして行われるこの大会は、世界中のテニスファンの注目を集める。今年の本戦は1月12日に開幕し、現在も熱戦が繰り広げられている。私は今年初めてメルボルンを訪れ、1日だけ現地で観戦する機会があった。メルボルンの街全体が全豪オープンを盛り上げようとする雰囲気に包まれており、多くの店で試合の中継が流れるなど、お祭りのようなムードが漂っていた。特に印象的だったのは、私が訪れた日が錦織圭の初戦の日で、会場には熱狂的な日本のテニスファンが多く駆けつけており、その光景に驚きと感動を覚えた。

錦織、崖っぷちからの大逆転勝利

錦織は“フルセットの激闘”というイメージが強く、良い意味でその印象が定着している。今大会の錦織の試合で最も印象に残っているのは、1回戦のT.モンテイロとの対戦だ。試合時間はなんと4時間を超える長丁場となり、錦織はセットカウント0-2と追い込まれながらも、結果は3−2(4-6、6-7、7-5、6-2、6-3)。見事な逆転劇を見せた。

第1セット、第2セットを相手に奪われた時点では、錦織はまさに崖っぷちの状態であった。一方、対戦相手のモンテロイは、ショットが正確にコートに収まり、調子の良さを感じさせるプレーを展開。そんな中、第3セット5−5で迎えた11ゲーム目で錦織がブレークに成功する。

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出典/Getty Images

その瞬間、大きなガッツポーズを見せ、そこから錦織が試合の主導権を握ったように思えた。その後の錦織のプレーは圧巻で、後がない状況にもかかわらず、第3セットを奪うと一気に流れを引き寄せ、そのまま3セット連取し大逆転勝利を収めた。この勝利で錦織は6年ぶり9度目の初戦突破を果たしたが、今大会では錦織は2回戦で敗退。しかしその試合内容を見る限り、今季の錦織にも大きな期待をしたい。

ちなみに私は、この錦織の試合を会場の自由席で観戦する予定だったが、出遅れてしまい、会場はすでに満員。仕方なくモニターで観戦したが、この試合はどうしても生で観たかったので、いまだに思い出すとその悔しさがぶり返してくる。

西岡が見せた冷静さと意地

1回戦目はA.ドーガズとの対戦。第1セットは落としたものの、第2セットのセットポイントで強烈なフォアハンドのストレートを決め、相手も手が出ない一撃を披露。このシーンを画面越しで見た時、「会場で観戦したかった」と心から思った。第3セットはタイブレークの末に死守し、第4セットのマッチポイントはバックハンドで締めくくった。見事3-1(3-6、6-4、7-6、6-3)で勝利し、2回戦進出を決めた。

2回戦目は世界ランキング3位のC.アルカラスと対戦。どんな試合になるのか楽しみであった。アルカラスの打つコースは正確で素晴らしく、さすがの実力を見せつけられる展開が続いた。結果は0-3(0-6、1-6、4-6)で2回戦敗退。試合後に西岡は自身のSNSで「全くもって歯が立ちませんでした!自分が主導権を握る瞬間は限りなく少なくこのレベルにはまだついていけない事を知らされました。まだまだ出来る事は沢山あるので成長していきます。ボコボコにされながらも沢山の歓声をありがとうございました。次はデビスカップで!」とコメントしていた。

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出典/Getty Images

これまで西岡良仁には「怒りん坊」というイメージがあったのだが、今回の試合では非常に冷静で、喜びの感情だけを大きく表に出していた。格上の相手でも第2セットでは1ゲーム、第3セットでは4ゲーム取るなど、ボコボコにされながらも最後まで戦い抜く意地を見せてくれ、その戦いぶりにも感動した。今回の試合で彼への印象が変わった気がしている。

ダニエル、アウェーで白熱した多彩なプレー

初戦はT・スクールケイト。試合開始直後からダニエル太郎は攻めの姿勢を見せ、序盤には熱いネットプレーで観客を沸かせた。その後も積極的に前に出て、相手の逆をつくショットやスライスでのドロップショットなど、多彩なプレーを展開。試合が進むにつれ、両者とも攻め合い、白熱した戦いとなった。

対戦相手のスクールケイトは、今回が初の本戦出場。さらに地元オーストラリアでの大会ということもあり、観客の熱い応援が彼を後押ししていた。結果は1-3(7-6、6-7、1-6、4-6)でダニエルは逆転負け。惜しくも初戦敗退となったが、最後まで見ごたえのある試合だった。


今回は本戦に出場した選手を取り上げたが、予選も含めると多くの日本人選手が激闘を繰り広げた大会であった。

1月末に兵庫県で「デビスカップ」ファイナル予選が行われる。日本代表として錦織、西岡、ダニエルが出場するほか、綿貫陽介そして初の代表選出となる柚木武も出場する。テニスは世界各地で大会が開催され、選手にとって非常に多忙なスポーツであるなと思う。一人でも多くの選手が怪我なく今季を戦い抜けることを祈っている。